素敵な麻きものスタイル

「ゆかたは毎年着るけれど、きものはハードルが高くてなかなか踏み出せない……」という方に近年人気なのが麻きもの。ホテルでお食事、美術館などのゆかたではちょっと行きにくい場所にも着られて、でも正絹のきものと違って水でざぶざぶ洗えるという、とっても便利なきものなのです。 今回は、そんな“きものとゆかたのいいとこ取り”な麻きものについてご紹介します。

麻きものは、きものとゆかたのいいとこ取り!

ゆかただけではない、夏の楽しみ方

「ゆかたは毎年着るけれど、きものは1枚も持っていない……」という方は多いのでは。

そんな方にオススメなのが、麻きものでの夏きものデビューです!

「そうは言ってもきものの着付は出来ない」という方も多いと思われますが、きものの着付は、ゆかたの下に衿のついた「長襦袢」を1枚多く着ているくらいで、実はゆかたとほぼ変わりません。つまり、ゆかたを着られれば、大方、きものも着られてしまうのです。麻きものはカジュアル着なので、帯もゆかたと同じ半巾帯を締めてOK。とっても気軽にきものデビューが出来てしまう優秀なきものです。

ゆかた(左)よりもきもの(右)の方がきちんと感があるのは、柄ゆきに加え、衿と足袋があるため。より上品な着姿になります。

麻きもの、いつ着ればいいの?

花火大会はゆかたの気分、という方も多いと思われますが、この夏のオススメは、ちょっとしたお出かけに麻きものを着てみること。水族館や美術館へ、ホテルでランチ……など、「ゆかたではちょっと行きにくいかも……」という場所に着て行くと、洋服では味わえない楽しさや優雅さが味わえるので、とてもオススメです。例えば店員の方に褒めてもらえたり、写真を撮るのも洋服の時より新鮮さがあって楽しくなったり、また、施設によってはゆかた・きものを着ていると施設料の割引やドリンクサービスなどの特典がある場所も。
着るだけで楽しい、そして着ているだけで見知らぬ人にも褒めてもらえる(かもしれない)、というのは、洋服ではなかなか出来ない体験です。

水族館で涼しげに、美術館で優雅に。普段と少し違う夏を楽しめます。

麻きものの着心地

麻きものの最大の特徴は、洋服やシーツ等にもあるように、涼しくサラッとした着心地です。初夏から盛夏にかけて、暑い日に何枚も布を纏って帯を巻いて…というのはやはりどうしても億劫に感じてしまいますが、そんな時に「涼しい」という利点はとても心強いもの。また麻は、(ゆかたに多い)綿素材よりも繊維が軽いため、着ていて楽!というところも見逃せません。注意すべき点は、絹などに比べるとシワが残りやすいこと。しかし素材や扱い方を知れば大丈夫。
麻きものの種類の見分け方、着る時のポイント、お手入れのコツをご紹介します。

綿 (左)に比べて麻(右・小千谷縮)は繊維が硬く、また生地にシボがある素材は、より肌にくっつきにくく、涼しく着られます。

麻きものの選び方

麻きものを選ぶ際のポイント

■ 自分の肌質に合わせて探す

麻は綿や絹に比べて繊維が硬いため、肌に貼りつきにくく夏でも涼しく感じられるのですが、その特性故に肌の弱い方が肌着などに麻を着ると、場合によっては肌荒れを起こしてしまうことも。そういった方は肌から遠い表地や帯などを麻素材にすると、肌を傷めにくく、且つ涼しく快適に着られます。
麻と一口に言ってもリネン、ラミーなど様々な植物の種類がありますが、麻きものに使われるのは主にラミー(苧麻)。ラミーにはリネンよりも繊維が硬く、涼感があるという特徴があります。
そんな麻きものの中でも、小千谷縮は比較的繊維がしっかりしているため肌に貼り付きにくく涼しい、近江縮は乾いた状態で布を丹念に揉んでいるため着心地が柔らかい……など、産地ごとでも少しずつ風合いが変わります。産地ごとの違いを知ることも大切ですが、一番良いのは現物を触って確かめること。お店へ行ったら、色々なものを試着してみましょう。

左が小千谷縮、右が近江縮。小千谷縮は涼感があり、近江縮は柔らかいです。どちらも素材はラミー(苧麻)。

仕立に注意!

夏きものは総じて裏地がない為、袷のきものよりも強度が落ちます。布そのものの強度が強い麻は、縫糸が裂けやすいです。縫い合わせた部分に負荷がかかりすぎないように、仕立の際には居敷当という、補強+透け防止のための部分的な裏地をつけると、安心して着られます。
また麻のきものの魅力は水洗いが出来ることですが、天然繊維のためどうしても若干の収縮が起きます。そのため予め1分(3.8mm)ほど、長めに仕立てておくのも一手です。

上図の白い布が“居敷当(いしきあて)”。透け防止+背縫いの補強に。

初めは裄をほんの少し長めにするのも○

長襦袢に注意!

麻きものは透けるため、下に着ている長襦袢がとても重要です!きもの越しに腕やふくらはぎが透けてしまうと、きもの姿の素敵さは半減。透け感は部屋の光と太陽光でも若干異なるので、部屋でチェックした時は大丈夫でも、外に出て強い陽射しを浴びた時、「思ったよりも透けてる……!」といったこともあります。そういった事態を防ぐためにも、麻きものにはマイサイズの長襦袢を合わせて着るのがオススメです。
また、前からは(布が2枚重なっているため)透けていないように見えても、後ろ側が透けていることがあります。夏きものを着たら、必ず鏡で後姿も確認しましょう。

2部式襦袢派の方は、下は足首くらいの長さになるように巻き、上の襦袢の裾は透けてしまうのを防ぐため、 帯のたれ先で隠れるくらいの長さのものを選ぶと○。長い場合は裾を折って着るという手もあります。

腕や足が透けてしまうため、乙女スリップ(衿付き肌着)はお勧めしません。夏きものはマイサイズの長襦袢で着ましょう

綿 (左)に比べて麻(右・小千谷縮)は繊維が硬く、また生地にシボがある素材は、より肌にくっつきにくく、涼しく着られます。

春から夏へ移り変わる装い

単衣の時期と夏きものの時期

麻きものを準備して、いざ着よう!と思ったときにふと心配になるのが、きものの「着て良い時期」。冬には袷(裏地のあるきもの)を着て、夏は単衣(裏地のないきもの)……ということは知っているけれど、「じゃあ麻きものはいつからいつまで?」「単衣と夏きもの(麻きもの)は着て良い季節が違うの?」といった点は、意外に悩んでしまうところです。

夏ものの着用時期早見表。小物から先に夏ものを取り入れていき、9月に入ったら、徐々に秋ものへ変えていきましょう。

麻きものをはじめ、夏きものを着る時期は「基本は7,8月」、ただし「気温に応じて前後して良い」という2点を押さえておけば大丈夫。特にカジュアルきものに関しては、体調と気温に合わせて、6月中旬~9月初頭までは、夏きものでお出かけしても全く構いません。
ちなみに、帯や半衿といった小物から季節を先取りするのが、きもののおしゃれ。麻の半衿やレース組紐の帯締めなどは、単衣きものに合わせてもOK。半衿は特に、6月に入ったら絽(夏向きの透け織)や麻のものを付けるとスッキリ素敵に見えます。

関連品

麻きものを長い期間着るために、下に着る長襦袢を変えるのも一手です。6月中旬までは透けない長襦袢に合わせて、盛夏になったら麻の長襦袢に変える、といった着方をすれば、きもの1枚で長く着られます。盛夏の長襦袢は、淡い色付きのものにするとオシャレ+透けにくいのでオススメ。5月だけどもう暑い!でもさすがに麻きものはまだ早いかも……?という日には、麻の帯や麻の長襦袢等で上手に体温調節をしましょう。

夏の長襦袢は色付きのものにすると透けにくく◎

色合わせのヒント

濃地きもので粋なカジュアルコーデ

今まで小千谷縮などの麻きものには淡地のものが圧倒的に多かったのですが、今年からやまとでも濃地を多く取り扱っており、より幅広いオシャレが楽しめるようになってきました。濃地のきものは、着姿をスッキリと引き締めてくれる効果があります。
濃地のきものには、明るい色の帯を合わせると、夏らしく華やかな印象になります。勿論、濃地きもの+濃い地帯のコーディネートもOK。シックで粋なスタイルになります。その場合は帯揚や帯締めに明るめの色を取り入れると、重くなりすぎず、バランスが取れたコーディネートに。また下の写真のように、ドットなどの柄帯を濃地のきものに合わせれば、落ち着いた中にも遊び心がある、大人のカジュアルコーデになります。

濃×濃コーデは小物で挿し色を。

濃地に柄帯で大人カジュアルコーデ。

淡地のきものには白帯で上品・濃い帯で格好良く!

今まで小千谷縮などの麻きものには淡地のものが圧倒的に多かったのですが、今年からやまとでも濃地を多く取り扱っており、より幅広いオシャレが楽しめるようになってきました。濃地のきものは、着姿をスッキリと引き締めてくれる効果があります。
濃地のきものには、明るい色の帯を合わせると、夏らしく華やかな印象になります。勿論、濃地きもの+濃い地帯のコーディネートもOK。シックで粋なスタイルになります。その場合は帯揚や帯締めに明るめの色を取り入れると、重くなりすぎず、バランスが取れたコーディネートに。また下の写真のように、ドットなどの柄帯を濃地のきものに合わせれば、落ち着いた中にも遊び心がある、大人のカジュアルコーデになります。

盛夏向きの、白×白の爽やかコーデ(左)。濃い色の半巾帯で引き締めると、また違った雰囲気で着られます(右)。

麻きものを着終わったら…

お手入れは水洗いでOK。退色しないよう、影干しをしましょう。 膝裏などのシワが気になる場合は霧吹きを当て、手で叩いて伸ばします。それでもシワが取れずアイロンをかけたい場合、小千谷縮などは独特の風合い(シボ)が損なわれないように、アイロンを生地から少し離して蒸気を当てるようにするのがオススメです。

シワが気になったら霧吹きで湿らせ、叩きます(左)。それでもシワが取れない場合は、アイロンを浮かせてかけましょう)

まとめ…

きものの中でもハードルが高そうな夏きもの、その中でも更にハードルが高そうな麻……というイメージを持たれている方も少なくない麻きもの。しかし麻は元来、皇族から庶民まで最も幅広く着られてきたとても身近な生地です。お手入れは絹よりも手軽、しかも軽くて涼しい、とよく見てみれば良い所だらけ。是非、この夏は麻きもので「ゆかたときもののいいとこ取り」してみましょう!